本のこと。
お店に置いた新刊です。
最初から読まずとも所々にコラムを挟んでいるので、
珈琲一杯の時間でも楽しめるかと思います。
太宰の小説は一時期集中して読んで、
そのあとは割りと付かず離れずの距離感で併走していた感じです。
好きか嫌いかで言えば嫌いだとは思うのですが、どうしても離れ難い作家です。
太宰は『人間失格』や『斜陽』のインパクトが強いですが、
実は短編小説家です。
彼の小説として発表したものは約160編、
そのうち長編作品は10編あるかないかです。
理由の1つに太平洋戦争が最も激しかったとき、
彼の立場が独り立ちした中堅作家だったことが挙げられます。
戦時中、中堅作家に回ってくる長編用の紙はありませんでした。
繊細なのか図太いのか、本当なのか嘘なのか、
無駄のない文章、無駄のない情報にも関わらず、
手際のよいリズムで次々確立されていくイメージと、
それに巻き込まれていく読み手。
読む度に違う角度や違うメッセージが出てくる太宰の作品。
余計なことを書かないということが、いかに無駄を味わってきたか。
ふぅむ、名作なのだなぁ。
書き出すと珈琲一杯ではとても終わらなくなるので、この辺でおわります。
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